先日読んだ本を紹介します。
著者はトルステン・ハーフェナーさん。ドイツでメンタリストとして有名な彼は、前著「心を上手に透視する方法」とかで日本でも有名です。
それで、本書「秘密を上手に使いこなす方法」には、これまでの著書で紹介されてきたような、人がこういう仕草をするときにはこういう心理状態ですよというような説明はほとんどありません。
人に対して「秘密にすること」が、どれだけその人に影響力を与えるかということが書かれています。
そしてそれを使いこなせるようになることで得られる利益も多いと言います。
隠せば隠すほど知りたくなる心理
人には、隠されれば隠されるほどその正体を知りたいという欲求があるそうです。
例えば、箱にこの中身は決してのぞかないでくださいという張り紙をすれば、中身が気になってつい開けてしまいます。
日本で言えば、鶴の恩返しでしょうか。
罠にかかった鶴を助けるだけの良心を持ったおじいさんでも、「私が機を織っている間は決してのぞかないでください」と言われてしまうと、女性の様子をのぞかずにはいられなくなりました。
逆にこのような欲求を利用して、人を惹きつけることもできると言います。
相手に対して全てを曝け出すのではなく、ある程度の秘密性、ミステリアスな部分を持っておくことで、強烈なインパクトを残すことができるとのことです。
ここで、野球のイチロー 選手のことを思い出しました。
2009年のWBC決勝の韓国戦で、イチロー選手が延長戦で決勝タイムリーを放ったときに、打った喜びを見せずに淡々としていたのは、相手に対して「こいつには敵わない」と思わせるためだったそうです。
最近はSNSなんかが主流で、私生活を全てネット上に曝け出しているという人もいますが、何らかの権威性などを示したい場合は、ある程度にしておいた方がいいかもしれませんね。
本書では、そのほかにも「秘密」の持つ力、日常でできる「秘密」を利用する方法および訓練方法なんかについても触れられています。
著者の体験談が例として多数挙げられていて、ストーリーとしても面白いです。
「秘密」の力を自分が利用するのに参考になるでしょうし、逆に「秘密」の力を相手が使ってきた時に自分を防衛するのにも役に立つでしょう。
そんなこの本を、本書風に紹介すると、
「世の中に『秘密』を使いこなす人が増えると困るので、決してこの本を目にしても読もうとしないで下さい。」
といったところでしょうか。