「キックの鬼」という梶原一騎さんの漫画作品の主人公、沢村忠。
この主人公のモデルは沢村忠という名前の実在したキックボクサーです。
その漫画自体は今から50年ほど前に連載されていた作品であります。
正直、我々世代(30代)にとって、その漫画には馴染みがありません。
ですが、「キック」、「沢村」、この2単語で思い浮かぶのは、「サワムラー」というポケモンではないでしょうか。
「あしが じゆうに のびちぢみして とおく はなれている ばあいでも あいてを けりあげることが できる。」
そうです。サワムラーは蹴り技が主体の格闘タイプのポケモンです。完全に沢村選手をモデルにして開発されたポケモンです。
そして、そんなサワムラーをネタにした漫才があります。
真空ジェシカというお笑いコンビのサワムラーというタイトルの漫才です。
この漫才は、まずサワムラーというポケモンを知っていること、そして「大乱闘スマッシュブラザーズ」でサワムラーがモンスターボールから出てくる時の声を聞いたことがあること、という二つの条件を満たした人だと笑えるが、そうでなければよくわからないという、完全にドンピシャのある世代だけを狙ったネタです。
少々強引な持っていき方をしましたが、この記事ではそんな真空ジェシカのことについて書いていきます。
M-1グランプリ2021決勝に進出した真空ジェシカ
真空ジェシカは、ボケの川北茂澄さんとツッコミのガクさんとのコンビです。
2011年に1月にコンビを結成。元々学生芸人として活動をしていたお二人がコンビを組みました。
川北さんが慶應義塾大学出身、ガクさんが青山学院大学出身ということで高学歴コンビとして知られています。
そんな真空ジェシカは、昨年末に行われたM-1グランプリ2021の決勝に初進出しました。初出場で健闘しましたが、結果はファーストラウンド6位ということで残念ながら最終決戦には進めませんでした。
実はジンクス通りだと最も優勝に近いコンビだった!?
真空ジェシカには、決勝に進んだ時点からどういうわけか優勝者のジンクスが付き纏います。
1つ目のジンクスは、決勝進出者の発表の段階です。
決勝進出者の発表では、2018年から3年連続で「2番目に名前を呼ばれたコンビが優勝している」というジンクスがありました。
そして、2021年大会で2番目に呼ばれたのが、真空ジェシカでした。
これが1つ目のジンクスです。
2つ目のジンクスは、「決勝のファーストラウンドでオズワルドの一つ前の出番のコンビが優勝する」というものです。
というのも、オズワルドは決勝のファーストラウンドで、2019年はミルクボーイの後出番、2020年はマヂカルラブリの後出番となっており、2年連続でチャンピオンになったコンビの後に漫才をしていました。
そして、2021年は真空ジェシカがオズワルドの一つ前の出番でした。
笑神籤で、オズワルドの名前が出た瞬間、真空ジェシカが優勝するためのジンクスが2つ揃った状態になりました。
なぜ真空ジェシカはMー1を獲れなかったのか
これだけM-1優勝のためのジンクスが出揃っていて、しかも漫才の出来も素晴らしく、とても面白かった(私は彼らの漫才が終わった瞬間にこれは優勝したなと思った)のになぜ優勝できなかったのか。
個人的に思ったことを書こうと思います。
1.審査員がネタ中の話題についていけていなかった?
まず、点数が伸び悩んだ大きな原因として挙げられるのが、ネタ中の話題がある特定の世代にしかわからないものを盛り込んでいるということです。
真空ジェシカがファーストラウンドで披露した「一日市長」のネタ中には、「キムタクのハンバーガーの持ち方」や、「ヘルプミーのハンドサイン」など、最近のテレビやSNSなどで取り上げられ、比較的若い世代には伝わるというものがありました。
また「ジャイロ回転の江夏の球」など、分かる人にはオオウケするが、わからない人は置いていかれるというものも所々あったということです。
ボケとツッコミを連発していくスタイルだったために、それまでせっかく受けていたのに、自分がわからない話題が出てきた時に、わからないから笑えないという状態になってしまうというもったいない状態になったのではないでしょうか?
2.ネタが緻密に練られすぎていて、話題の移り変わりのテンポが速すぎた?
真空ジェシカが披露した漫才は、終始ボケとツッコミの連発で進行していっていたのでテンポが早めに感じました。
特に序盤の方の、つみんちゅの説明をしているうちに、5秒秘書が帰ってしまう部分には、自己紹介した人たちが皆沖縄の人にありがちな苗字というボケも重なっており、少々複雑な感じになっているということです。
それがテンポが速く進んでいるために、(全部面白くて笑いどころなのだけれど)、初見ではちょっとついていきづらい感じがあったのかなと思います。
3.お二人の声質?
YouTubeなどでは、M-1決勝の生放送の行われている時にそれを同時中継で見て審査をするということを色々な芸人さんが行っていました。
その放送に流れていたチャット欄を見ると、二人の声が聞きづらいというコメントもいくつか見られました。
そう言われると、お二人の声はやや高めなのかなというのは感じはしたので、それでテンポが早いネタをすることで、聞き取りづらいという点があったのかもしれません。
ひょっとしたら、一つ前の出番のハライチが大声で叫ぶ系のネタだったので、それと比べて音量が小さく感じただけかもしれませんが。
素人目からして考えられるとしたら、こんな感じでしょうか?
正直言って、めちゃくちゃ面白いネタでした。
二進法の数え方で手遊びをしていた理系のおばあちゃんが、ヘルプミーのハンドサインをしていたというところや、駒澤大学のタスキの伏線回収などは素晴らしく、後半にむけて盛り上がっていたので、本来ならもっと点数を獲得して欲しかったところです。
私は今回のMー1で初めて真空ジェシカのネタを見たのですが、一発で彼らのファンになってしまいました。
彼らの決勝敗退が決まり、2本目のネタが見られないと決まった時は非常に残念でありました(最後にキングオブコントの出番待ちの格好をしているというボケが見られたのがせめてもの救いでしょうか)。
YouTubeのM-1の公式チャンネルには、Mー1で披露された三回戦以上の全ネタが上がっており、何度でも見られます。
真空ジェシカの決勝ネタの再生回数は、私がこの記事を書いている1/29時点で448万回となっており、これは錦鯉、インディアンス、オズワルドという最終ラウンドに進んだコンビ達に次ぐ再生回数です(このままの再生回数の上がり方ですと、おそらく再生回数ではいずれ錦鯉に次いで2位になりそうな勢いです)。
多くのファンが彼らのことを面白いと認めている証拠です。
今年は審査員の交代があるでしょうし、色々と判定基準も変わるかもしれません。
また、真空ジェシカは昨年よりもTVでの露出が増えると予想されます。
2021年の決勝で十分なインパクトを残してくれた真空ジェシカ。
私は、今年彼らがM-1優勝を果たしてくれることを願わずにはいられません。