人生を振り返るシリーズ。
今回は、私が幼稚園生の頃の話です。
当時、住んでいた家のお風呂が工事だか何だかで、一時的に使えなくなったことがありました。
それで、その期間は近所の銭湯に父が私を連れて行ってくれていました。
これまであんまり銭湯にいく機会がなかったので、これが父と銭湯に行った記憶としては一番古いかもしれません。
下町にある銭湯で、特徴もないような平凡な銭湯です。
父の仕事が終わってからだったので、多分夜に行っていたと思うのですが、その日は私たちの他に人がいなくて貸切状態でした。
体を洗い、湯船に浸かります。多分、晩ご飯が何かとかそんな話をしていたのだと思います。
そうしているうちに、お風呂場の扉が開いて誰か他の人が入ってきました。
肉付きの良い大柄の人です。スキンヘッドで年はよくわかりませんが、おっちゃんと呼ばれるくらいの年齢です。
ただそれらの特徴がかすむくらいの大きな特徴がありました。
それは、背中に龍を背負っているということです。
つまりその筋の人っぽいということです。
今でこそ銭湯などの公共浴場では、刺青お断りというのは基本になっていますが、当時は今ほど規制が厳しくなくて、普通に見かけたりしました。
洗い場で、豪快にお湯をかけて体を洗っています。
広くない銭湯ですので、湯船からははっきりと龍が見えます。そして目が合います。青い龍と。
チラッと体を洗っているおっちゃんの後ろ姿を見ると、龍はタオルでこすっても落ちないというのが不思議でした。
当時私はドリフのコントが大好きでよく見ていました。
その中で、サウナに刺青が入った人(ドリフメンバー)が入ってきて、次に入ってきた人のそれの方が面積が大きいので、どんどん良い場所を譲っていくというのを見ていました。
最後の高木ブーさんの全身刺青はすごいです。
なので、面積的にこの目の前のおっちゃんは中々偉い立場なのかなと、思っていました。
父と私は心なしか若干声のトーンは落とし目で、でもこれまで通りの話を続けます。
それで、そろそろ晩ご飯の時間だから上がるかということで、頃合いを見てお風呂から上がりました。
そのまま脱衣所で着替えて家に帰りました。
家に帰ってから、興奮気味にこの一連の話を母にしたのを覚えています。
今でも、この話を時々父とするくらいなのでいい思い出なのですが、この時父は生きた心地がしなかったそうです。
私が指を差して「あの、おっちゃんの背中のやつ何?」とか聞かれたらどうしようと思っていたようです。
おかげで、父はその日はお風呂に浸かりながら、何故か冷や汗をかいたそうです。
子供ながらに何となく触れてはいけない感じの人たちなのだというのがわかったのは、ドリフのコントで知っていたからなので、見ていて良かったなと思います。